近年、「軒ゼロ住宅(のきゼロ住宅)」という言葉を耳にする機会が増えています。スタイリッシュな外観や敷地を最大限活用できるメリットから、都市部を中心に採用が急増しています。しかしその裏側では、雨漏りリスクの高さが大きな問題として表面化してきました。
実際、弊社への雨漏り相談の中でも、ここ数年「軒ゼロ住宅」に関するケースが明らかに増えています。なぜ軒ゼロ住宅で雨漏りが起きやすいのか、その原因と注意点を専門家の視点で詳しく解説します。
軒ゼロ住宅とは?
軒ゼロ住宅とは、屋根の先端(軒)がほとんど外に出ていない住宅のことを指します。従来の日本住宅は軒が大きく張り出し、雨・風・紫外線から外壁を守る仕組みがありました。
しかし、都市部の狭小地やデザイン性の高い外観が求められる現代では、軒の出を最小限にした「軒ゼロ」「軒が極端に短い住宅」が増えています。
軒ゼロ住宅が雨漏りしやすい本質的な理由
1. 外壁が雨を“直接受ける”構造だから
本来、軒があることで外壁は雨の直撃を避け、長持ちしやすくなります。しかし軒がない住宅では、外壁が常に風雨・紫外線にさらされ、劣化が早まります。特に台風時は横殴りの雨が壁を何時間も叩きつけ、わずかな隙間からでも雨水が内部に浸入しやすくなります。
2. サッシ周りが弱点になりやすい
外壁だけでなく、サッシとの取り合い部分も雨漏りリスクが高まるポイントです。軒がないことでサッシが直接雨を受け続け、気づかないうちに防水テープやシーリングが劣化し、内部へ浸水するケースが急増しています。
3. 二次防水への負荷が限界を超えやすい
住宅は「一次防水(外壁・屋根)」で防ぎきれなかった雨水を「二次防水(防水シート)」で受け流す構造になっています。しかし軒ゼロ住宅では、一次防水が受ける負荷が極端に大きく、二次防水まで水が回り込む頻度が増加。結果として、壁内に浸水しやすい環境が生まれてしまいます。
4. 外壁の乾燥時間が短く、劣化が加速する
雨を受けやすいだけでなく、外壁が乾ききる前に次の雨が降り続くと、外壁材が常に湿った状態に近づきます。これがサイディングの反り・ひび割れ・シーリング剥離などを引き起こし、雨漏りリスクをさらに高めます。
軒ゼロ住宅の雨漏り事例
■ 例①:外壁に異常がないのに雨漏り(実例)
港区のA様邸では、外壁に見える損傷はありませんでしたが、強風を伴う雨の日にだけ雨漏りが発生。調査すると、サッシ上部の防水テープが劣化し、軒がないため雨が直接入り込んでいたことが判明しました。
■ 例②:外壁が数年で劣化し雨染みが発生
都心の新築から5年のB様邸では、サイディングの反りとシーリングの痩せが早期に進行。紫外線と風雨の直撃により、通常より早く外壁が劣化したことが原因でした。
軒ゼロ住宅を長持ちさせるための予防と対策
1. サッシ周り・取り合い部分の重点点検
サッシ・外壁の継ぎ目・バルコニーとの取り合いは必ず定期点検を実施。小さな隙間でも放置すると雨漏りに直結します。
2. シーリングの早期打ち替え
一般住宅より劣化が早いため、10年を待たず5〜7年ごとの点検・打ち替えを推奨します。
3. 外壁塗装は「防水・弾性・耐候性」の高い塗料を選ぶ
軒ゼロ住宅は塗膜が建物を守る要となるため、通常よりワンランク上の防水塗料や高耐候塗料が効果的です。
4. 雨漏りが疑われる時は専門調査を
軒ゼロ住宅の場合、雨漏りは原因が複合していることが多く、目視だけでは判断できません。
散水試験・赤外線調査などを組み合わせて原因を特定することが再発防止につながります。
まとめ|軒ゼロ住宅は美しいが雨に弱い。だからこそ「予防」が鍵。
軒ゼロ住宅はデザイン性や敷地効率という大きなメリットがある一方、構造的に雨漏りが発生しやすい建物でもあります。だからこそ、定期点検と早めのメンテナンスが欠かせません。
小さなサインを見逃さず、症状が出る前に予防していくことが、雨漏りリスクを大幅に減らす唯一の方法です。
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