垂木(たるき)の寸法の選定方法とは?構造耐力確保の実務基準

屋根を支える重要な構造部材のひとつに「垂木(たるき)」があります。

垂木は完成後には見えにくい部分ですが、屋根の強度や耐久性に関わる重要な部材です。
寸法や設置間隔が建物の条件に合っていない場合、屋根面のたわみや軒先の変形、
屋根材のズレなどにつながる可能性があります。

一般住宅では45×45mmや45×60mm、45×75mmなどの垂木が使われますが、
屋根材の種類だけで寸法を決めることはできません。

この記事では、垂木の役割や一般的な寸法、設置間隔、寸法を決める条件、交換や補強が必要になる症状について解説します。

屋根垂木と野地板の構造イメージ

屋根垂木の基礎知識

垂木とは

垂木とは、屋根の傾斜に沿って棟木・母屋・軒桁に架け渡し、
その上に施工される野地板を支える部材です。

一般的な屋根は、室内側から次のような順番で構成されています。

  • 棟木・母屋・軒桁
  • 垂木
  • 野地板
  • 防水紙
  • 屋根材

垂木は、野地板や防水紙、屋根材にかかる荷重を受け止め、母屋や軒桁などへ伝える役割を持っています。

垂木の主な役割

垂木の主な役割は次のとおりです。

  • 野地板を下から支える
  • 屋根材や防水紙などの荷重を受ける
  • 屋根にかかる力を母屋や軒桁へ伝える
  • 屋根面の形状を保つ
  • 軒先を支える
  • 風や積雪による荷重に耐える

垂木の寸法や設置間隔が建物に合っていない場合、野地板を十分に支えられず、屋根面のたわみや軒先の変形につながる可能性があります。

垂木と野地板の違い

垂木と野地板は、どちらも屋根材の下にある部材ですが、それぞれ役割が異なります。

部材 主な役割
垂木 野地板を下から支え、荷重を母屋や軒桁へ伝える
野地板 垂木の上に張り、屋根面を形成する
防水紙 屋根材の内側へ入った雨水を屋内へ通しにくくする
屋根材 雨・風・紫外線などから建物を守る

野地板の役割や劣化については、以下の記事でも詳しく解説しています。

垂木寸法の幅とせいとは

垂木の寸法は、一般的に「幅×せい」で表されます。

例えば45×60mmの垂木であれば、45mmが幅、60mmがせいです。「せい」とは、垂木を設置したときの高さにあたる部分を指します。

垂木の表記 せい
45×45mm 45mm 45mm
45×60mm 45mm 60mm
45×75mm 45mm 75mm
45×90mm 45mm 90mm

一般的には寸法の大きい側を縦方向にして使用します。せいが高いほど曲げやたわみに対して有利になるため、支持間隔や軒の出が長い屋根では、せいの大きな垂木が検討されます。

一般的に使われる垂木寸法

木造住宅や小規模な屋根では、次のような寸法の垂木が使われることがあります。

垂木寸法 使用例・特徴
36×45mm 小規模な下屋や軽量な屋根で使われる場合がある
45×45mm テラスや支持間隔の短い小規模な屋根など
45×60mm 一般住宅で使用されることがある代表的な寸法
45×75mm 支持間隔や軒の出が比較的長い場合
45×90mm 長い支持間隔や大きな荷重に対応する場合
60×75mm以上 重量のある屋根や大きな強度が必要な場合

上記は一般的な使用例であり、45×60mmを選べばすべての住宅で安全というわけではありません。

屋根材の重さや母屋の間隔、積雪量などによって必要な寸法は変わるため、実際の建物ごとに確認する必要があります。

垂木の設置間隔は303mm・455mmが目安

垂木は、屋根面へ一定の間隔で平行に設置されます。

設置間隔 特徴
303mm 約1尺間隔。屋根面を細かく支えやすい
364mm 約1.2尺間隔。設計条件によって採用される
450~455mm 約1.5尺間隔。一般住宅で多く見られる
500mm前後 野地板や屋根構造の仕様によって採用される場合がある

間隔を狭くすると垂木の本数が増えるため、1本あたりが受ける負担を小さくできます。

ただし、垂木の間隔だけで屋根の強度が決まるわけではありません。垂木寸法、野地板の厚さ、屋根材の重量、釘やビス、接合金物なども含めて検討します。

垂木寸法を決める主な条件

垂木寸法は、屋根材の種類だけで決めることはできません。主に次の条件を確認します。

条件 垂木寸法への影響
支持間隔 長いほど中央部分がたわみやすくなる
設置間隔 広いほど1本あたりが受ける荷重が増える
屋根材の重量 重いほど垂木にかかる荷重が増える
軒の出 長いほど軒先部分が変形しやすくなる
積雪量 雪の多い地域では積雪荷重を考慮する必要がある
風圧 屋根を吹き上げる力に耐える接合が必要になる
木材の種類 樹種や強度等級によって性能が異なる
太陽光パネル 屋根に追加される重量を考慮する必要がある

垂木の支持間隔

支持間隔とは、垂木を下から支える母屋や軒桁などの間隔です。

垂木の全長が同じでも、途中に母屋があるかどうかで、実際に垂木が支える距離は変わります。支持間隔が長いほど垂木の中央がたわみやすくなるため、せいを大きくするなどの検討が必要です。

屋根材と下地の重量

垂木が支えるのは、屋根材だけではありません。

  • 野地板
  • 防水紙
  • 桟木
  • 瓦やスレート
  • 金属屋根材
  • 断熱材
  • 太陽光パネル

これらの重量を含めて、必要な寸法と間隔を検討します。

軒の出

軒の出とは、外壁から屋根の先端まで張り出した長さです。

軒先は軒桁より外側へ伸びているため、軒の出が長くなるほど垂木の先端がたわみやすくなります。条件によっては、せいの大きな垂木や補強材が必要です。

積雪量と風圧

積雪地域では、屋根へ積もる雪の重量を考慮しなければなりません。

また、強風時には屋根を上方向へ引き上げる力がかかるため、垂木の寸法だけでなく、棟木・母屋・軒桁との固定方法も重要です。

垂木を太くするだけでなく、適切な接合金物や釘、ビスを使用する必要があります。

屋根材別に見る垂木寸法の考え方

屋根構造と垂木の配置イメージ

屋根材ごとの一般的な傾向は次のとおりです。

屋根の条件 垂木寸法の使用例
テラス・小規模な軽量屋根 45×45mm程度
スレート・軽量金属屋根 45×60mm程度
支持間隔や軒の出が長い屋根 45×75mm以上
瓦など重量のある屋根 60×75mm以上が検討される場合がある
大きな荷重がかかる屋根 45×90mm以上が検討される場合がある

この表は、構造上の確認をせずに寸法を決めるためのものではありません。

スレート屋根の場合

スレート屋根は、瓦屋根と比べて軽量な屋根材です。一般住宅では45×60mm程度の垂木が使われることがあります。

ただし、軒の出や支持間隔が長い場合、太陽光パネルを設置する場合などは、より大きな寸法が必要になることがあります。

ガルバリウム鋼板などの金属屋根の場合

ガルバリウム鋼板などの金属屋根は、一般的にスレートや瓦より軽量です。

軽量な屋根材であっても、垂木寸法は屋根材だけでは決まりません。支持間隔、軒の出、積雪量、野地板の仕様などを確認して選定します。

瓦屋根の場合

瓦屋根は、スレートや金属屋根と比べて重量が大きくなる傾向があります。

そのため、垂木を太くする、設置間隔を狭くする、母屋の間隔を調整するなど、屋根全体で荷重に対応する必要があります。

垂木に使われる主な木材

垂木には、強度、耐久性、加工性、コストなどを考慮して木材を選びます。


  • 軽量で加工しやすく、住宅用の木材として広く使用されています。
  • ヒノキ
    耐久性や耐水性に優れていますが、杉などと比べて価格が高くなる傾向があります。
  • 構造用集成材
    複数の木材を接着して作られ、寸法の安定性や強度を確保しやすい木材です。
  • SPF材
    北米産の針葉樹材で、比較的軽量で加工しやすい特徴があります。

樹種名だけで強度を判断せず、木材の品質、含水率、強度等級なども確認する必要があります。

垂木の寸法不足や劣化で見られる症状

垂木の寸法や施工方法が建物の条件に合っていない場合や、木材が劣化している場合には、次のような症状が見られることがあります。

  • 屋根面が波打って見える
  • 屋根の一部がへこんでいる
  • 軒先が下がっている
  • 野地板がたわんでいる
  • 屋根材が割れる・浮く・ずれる
  • 釘やビスが効かない
  • 天井に雨染みがある
  • 小屋裏の木材が黒く変色している
  • 垂木を触ると柔らかい

これらの症状があっても、原因が垂木だけとは限りません。野地板、防水紙、母屋、屋根材なども含めて点検する必要があります。

垂木の交換や補強が必要になるケース

雨漏りが長期間続いている

屋根内部へ雨水が入り続けると、野地板だけでなく垂木まで腐食する可能性があります。

木材が黒く変色している、表面が崩れている、釘やビスが固定できないといった場合は、交換や補強を検討します。

雨漏りによって野地板が腐食した事例については、以下の記事も参考にしてください。

屋根面や軒先が下がっている

屋根面の一部がへこんでいる場合は、垂木や野地板、母屋が劣化している可能性があります。

屋根材だけを交換しても、構造部分の劣化が残っていると症状が改善しないことがあります。

屋根の葺き替えを行う

葺き替え工事で既存の屋根材や野地板を撤去すると、垂木の状態を直接確認できます。

劣化が一部に限られている場合は、傷んだ部分を交換したり、既存の垂木へ新しい木材を添えて補強したりする方法があります。

野地板の補修や重ね張りについては、以下の記事でも紹介しています。

既存住宅の垂木寸法を確認する方法

既存住宅の垂木寸法は、次のような方法で確認できる場合があります。

  • 小屋裏から確認する
  • 軒天の一部を外して確認する
  • 建築図面を確認する
  • 葺き替え工事で野地板を撤去した際に確認する

ただし、小屋裏の奥へ無理に入ったり、屋根や軒先へ上ったりするのは危険です。

修理や補強を目的とする場合は、寸法だけでなく、腐食・割れ・接合部の状態まで確認しましょう。

住宅の垂木をDIYで交換するのは避ける

テラスや小規模な物置では、DIYで垂木を施工する例もあります。

しかし、住宅の垂木は屋根を支える構造部材です。寸法や接合方法を誤ると、屋根のたわみや雨漏りだけでなく、積雪や強風による破損につながるおそれがあります。

住宅の垂木工事では、次の項目を確認する必要があります。

  • 既存垂木の寸法
  • 垂木の支持間隔
  • 垂木同士の設置間隔
  • 屋根材と下地の重量
  • 木材の樹種と強度
  • 軒の出
  • 積雪量と風圧
  • 接合金物
  • 野地板の厚さ
  • 雨漏りの原因

屋根上での作業には転落の危険もあります。

住宅の垂木交換や補強はDIYで行わず、屋根構造を確認できる専門業者へ相談しましょう。

垂木寸法は屋根全体の条件から決める

垂木は、野地板や屋根材を支え、屋根にかかる荷重を母屋や軒桁へ伝える重要な部材です。

一般住宅では、45×45mm、45×60mm、45×75mm、45×90mmなどの垂木が使われることがあります。設置間隔は303mmや450~455mm程度が代表的です。

ただし、垂木寸法には、すべての住宅に共通する正解があるわけではありません。

  • 支持間隔
  • 設置間隔
  • 屋根材の重量
  • 軒の出
  • 積雪量
  • 風圧
  • 木材の種類
  • 接合方法

一般的な寸法表だけで判断せず、建物ごとの構造と劣化状況を確認することが大切です。

屋根面のたわみや長期間の雨漏りが見られる場合は、屋根材だけでなく、野地板や垂木まで傷んでいないか点検しましょう。

この記事の監修者

株式会社 LOVE STYLE
代表取締役 阿部 泰三

屋根工事・雨漏り・雨桶工事など屋根工事業者として工事に携わり30年以上。工事監督などの実績を持つ「株式会社 LOVE STYLE」の代表取締役。

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