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お客様からのご相談
W様より、「2階の天井が湿気てクロスが剥がれているので、雨漏りが原因かどうか調べてほしい」とご連絡をいただきました。
W様のお宅は、大手住宅メーカーが建てた築24年の寄棟屋根の住宅です。現地を調査したところ、確かに2階天井のクロスの一部が剥がれており、その奥のボードには黒カビが発生していました。
そこで、雨漏りが疑われる天井の直上部分の屋根を確認したところ、スレート屋根の谷部に多数の踏み割れが見つかりました。
踏み割れとは、屋根工事中などに作業者の体重がかかることで、スレート屋根材にひび割れが生じる現象です。新築時の屋根工事や葺き替え工事の際に発生した踏み割れを見逃してしまい、時間が経ってから雨漏りなどのトラブルにつながるケースがあります。
雨水の侵入経路を確認するため、今回は散水試験と赤外線サーモグラフィー調査を実施しました。スレート屋根の谷部にある踏み割れ部分へ散水し、散水前後の熱画像を比較したところ、漏水による温度低下が確認されました。
この結果から、踏み割れ部分から雨水が侵入していることが明らかになりました。
調査結果をW様へご報告したところ、予算の関係もあり、まずはなるべく簡易な応急措置で様子を見たいとのご希望でした。屋根メーカーの施工要領書には、踏み割れ部の「ひびの補修」として、シーリング材を充填する方法が示されています。
そのため、10枚以上のスレート屋根の割れ部分にシーリング材を充填し、しばらく様子を見ることになりました。
しかし、しばらくしてW様より「やはり雨漏りが止まらない」と再度ご連絡をいただきました。シーリング材による補修が効かない可能性は当初から想定していたため、最終的な解決には、より詳しい調査と根本的な対策が必要でした。
そこで小屋裏に入って確認したところ、雨漏りしている部分の上方にある野地板に白い腐朽菌が繁殖し、大きな穴が開いていることが分かりました。
踏み割れ部分から侵入した雨水が、防水紙のくぎ穴などを伝って野地板へまわり、長期間にわたって湿った状態が続いたことで、腐朽菌が発生していたと考えられます。
W様には、すでに野地板の一部が腐っている状況を詳しくご説明しました。応急措置では対応が難しい状態だったため、新しい屋根材への葺き替えと、腐朽した野地板の交換をご提案し、ご了承いただきました。
スレート屋根では、踏み割れが発生しやすい箇所があります。
スレート屋根材1枚の大きさは製品によって異なりますが、横幅は910mm前後、縦は400mm前後のものが多く使われています。施工時には、軒先から棟に向かって、上の板が下の板の上半分を覆うように重ねていきます。また、左右の板の継ぎ目が上下で互い違いになるように並べます。
踏み割れが起こりやすいのは、屋根材の中央付近です。中央部分の直下に垂木が入っていないと、荷重がかかった際にたわみが大きくなり、ひび割れが生じやすくなります。
実際に、95kg程度の荷重で中央部に4mmほどのたわみが発生し、踏み割れが生じることがあります。しかも、初期の踏み割れはヘアクラックのような細いひびであることが多く、目視では確認しづらい場合があります。裏面に油性液を塗布して、ようやく確認できる程度のこともあります。
そのため、屋根工事中に踏み割れが発生していても、その場で見つけるのは簡単ではありません。発見されないまま年月が経つと、ひびが少しずつ広がり、雨漏りの原因になってしまうのです。
踏み割れを防ぐためには、施工中に踏み割れを発生させないことが最も重要です。
そのためのポイントは大きく2つあります。
1つ目は、垂木の455mm間隔に合わせて、屋根材の継ぎ目部分を正しく配置することです。屋根材の中央や継ぎ目と垂木の位置がきちんと合っていれば、屋根材にかかる荷重を支えやすくなります。
しかし実際には、この位置がずれている現場もあります。これは、垂木を配置する大工と、屋根をふく職人との連携不足が原因になることがあります。
2つ目は、屋根の谷部や端部など、踏み割れが発生しやすい箇所の垂木間隔を通常より狭くしておくことです。荷重が集中しやすい部分を重点的に補強しておけば、踏み割れのリスクを下げることができます。
今回のW様邸では、踏み割れ部分から侵入した雨水が、防水紙のくぎ穴を伝って野地板に到達し、腐朽菌を発生させて大きな穴を作っていました。
補修工事では、腐朽した野地板を撤去して新しい野地板に交換し、その上に新しい防水紙を施工しました。そのうえで、新しいスレート屋根材へ葺き替え、雨水が入りにくい状態に整えました。
スレート屋根の踏み割れは、初期段階では非常に分かりにくい不具合です。しかし、放置すると雨漏りや野地板の腐朽につながることがあります。天井クロスの剥がれや黒カビ、湿気が気になる場合は、室内だけでなく、屋根材や小屋裏まで確認することが大切です。
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