断熱等性能等級6相当の杉並区M様邸において、引き渡しから半年後の点検で、玄関土間に加え、収納棚に「赤い液体」が付着しているという結露が疑われる不具合が発見されました。
現地調査の結果、赤い液体は収納棚下段の換気装置周辺から発生していることが判明。換気装置(壁掛けダクト式熱交換型)は、本体上部に4本の断熱ダクト、下部にドレーン管が接続されていました。
ドレーン管:最初に点検しましたが、異常はありませんでした。
ダクト仕様:亜鉛メッキ鋼板製フレキシブルダクトを、厚さ25mmのグラスウールとポリエチレン系樹脂フィルムから成る断熱被覆材で包んだものです。
2. 結露箇所と原因の特定
接続部を詳細に確認したところ、外気ダクト(屋外から新鮮な外気を取り込むダクト)と換気装置の接続部で結露が発生していることが分かりました。
● 外気ダクト内部の結露と錆の確認
外気ダクトを取り外して確認すると、換気装置との接続部から約500mmの範囲で、ダクト本体と断熱被覆材の間に結露が発生し、湿潤状態でした。さらに、フレキシブルダクトを形成するワイヤに錆(赤錆)が発生していました。
● 換気スリーブ接続部の結露
外壁を貫通する換気スリーブとの接続箇所も同様に、断熱被覆材の表面、およびダクトと断熱被覆材の間に結露が見られました。換気スリーブが金属製であったため、換気装置側よりも結露しやすい状況でした。
● 結露の原因解明:断熱欠損と気密欠損
熱交換型換気システムにおいて、外部に繋がる外気ダクトと排気ダクトは結露防止のため断熱が必須ですが、本住宅では断熱が施されているにもかかわらず結露が発生していました。
接続部を詳細に観察した結果、以下の2点が結露の主要因と特定されました。
断熱材の性能低下(断熱欠損):金属製のフレキシブルバンドでダクトを固定する際、断熱材が強く押しつぶされていたため、断熱性能が局所的に低下していました。これにより、ダクト内を通る冷たい外気で冷やされた被覆材表面に、水蒸気を含んだ室内空気が触れて結露したと考えられます。
接合部の気密不良(気密欠損):外気ダクトと換気装置の接合部に気密欠損が生じ、冷たいダクトと断熱被覆材の間に室内空気が侵入し、内部で結露が発生したと推定されます。
3. 赤い液体の正体
この結露水がワイヤの錆を誘発し、赤錆を含んだ結露水となって接合部から漏れ出し、換気装置の裏面を伝って棚板に流れ落ち、たまったものが「赤い液体」であると推定されました。
4. メーカー推奨の正しい施工順序とマニュアルの課題
換気装置メーカーによると、正しい施工順序は以下の通りです。
換気装置や換気スリーブの接合部にダクトを差し込み、フレキシブルバンドで確実に結束する。
結束後に、ダクトの根元まで断熱材を隙間なくかぶせる。
しかし、メーカーの施工マニュアルにはフレキシブルバンドと断熱材の施工順序に関する明確な記載がなかったことが、今回の施工不良を招いた一因と考えられます。
5. 改修対応
今回の調査結果に基づき、以下の対策を実施します。
濡れてしまった断熱被覆材はすべて取り替えます。
接続部のフレキシブルバンドによる結束後に、ダクト熱被覆材を二重にして断熱を補強します。
断熱材をつぶさないよう、接合部を気密テープで丁寧に処理し、気密欠損も解消します。









