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お客様からのご相談
先日ご相談をいただいたのは、築年数を経た立派な和風建築にお住まいの世田谷区のF様でした。「雨が降ると、どうも軒下から余計な水音がするんだ」というお困りごとから、私たちの仕事は始まりました。
さっそく梯子をかけて調査してみると、原因はすぐに分かりました。長年、家を守り続けてきた銅の雨どいです。
一見すると重厚な風格を保っているように見えましたが、底を覗き込むと指が入るほどの大きな穴が数箇所、そして針で突いたような「ピンホール」が無数に広がっていました。銅板が経年劣化で薄くなり、酸性雨や瓦の釉薬成分による電食(腐食)に耐えきれなくなったサインです。
「ずっとこの独特の色合いを気に入っていたんだけど、もう限界かな…」
F様は、使い込まれた10円玉のように深い褐色に変化した雨どいを見つめ、寂しそうに、けれど決意を込めて仰いました。
今の時代、雨どいの主流は塩化ビニル樹脂や、耐久性に優れたガルバリウム鋼板です。施工性も良く、コストも抑えられます。しかし、今回の住まい手様が求めていたのは「機能」だけではありませんでした。
「新しくなっても、この家の佇まいに馴染むものがいい」
その想いを受け、私たちは再び「銅」による掛け替えをご提案しました。
工事を前に、改めて銅の特性についてお話しさせていただきました。
メリット:唯一無二の経年変化
最大の魅力は、やはりその美しさです。最初は眩いばかりの光沢を放ちますが、数年で落ち着いた暗褐色へ、そして数十年後には「緑青(ろくしょう)」と呼ばれる美しい青緑色へと進化します。神社仏閣のように、建物と共に「育つ」素材なのです。
デメリット:避けられない穴あきとコスト
一方で、今回のように長い年月を経ると、特定の場所に水滴が集中することで穴が開きやすいという弱点があります。また、素材自体が高価で、加工にも熟練の技術を要するため、一般的な素材よりも初期費用がかさみます。
F様は「その変化こそが楽しみなんだ」と、笑顔で頷いてくださいました。
既存の古い雨どいを慎重に取り外し、新しい銅の雨どいを据え付けていきます。職人が一つひとつ丁寧に勾配を調整し、支持金具を固定していくたびに、軒先がパッと明るい輝きを取り戻していきました。
工事が終わった直後の軒先は、まるで金細工を施したような神々しさです。
完成した雨どいを見上げる住まい手様の表情は、最初のお困りごとの時の不安から、これからの住まいへの期待へと変わっていました。
雨の日は少し憂鬱なものですが、新しい雨どいがしっかりと水を受け止める音を聴きながら、移り変わる銅の色を愉しむ。そんな豊かな時間が、このお宅に再び戻ってきました。
お客様の声











