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お客様からのご相談
T様は、築7年の木造2階建て住宅にお住まいです。
屋根は片流れ形状で、新築から1〜2年ほど経ったころから、軒天井に使用されているケイ酸カルシウム板にひび割れが生じ、部分的に剥がれ落ちるようになったそうです。
そのほかにも外壁まわりに不具合が見られたため、弊社へご相談をいただきました。
まず屋根裏空間を確認したところ、内部には水跡がはっきりと残っていました。ただし、状況を確認した結果、外部から雨水が浸入した雨漏りではなく、屋根断熱部分で発生した結露によるものと判断しました。
目次
屋根断熱の通気層に問題がないかを確認
T様邸の屋根は、垂木の間にPET不織布製の通気スペーサーを装着して通気層を確保し、その下側にセルロースファイバーを吹き込む屋根断熱仕様になっていました。
本来であれば、通気スペーサーによって屋根面の通気層を確保し、断熱材の湿気を外へ逃がす構造です。しかし、吹き込み式の断熱材を使用する場合、施工時の圧力で通気スペーサーが押しつぶされ、通気不良を起こすことがあります。
そこで、まず軒天井側から通気層の状態を目視で確認しました。すると、通気スペーサー自体に大きな変形や不具合は見られませんでした。
しかし、水跡が残っている以上、屋根内部で何らかの湿気トラブルが起きていることは明らかです。T様にご了承いただいたうえで、屋根断熱部分を一部解体し、設計図通りに施工されているか、結露水がどこから発生しているのか、水蒸気がどこに溜まっているのか、軒天井の剥落と屋根断熱の結露に関係があるのかを詳しく調査しました。
セルロースファイバーが大量の水蒸気を含んでいた
室内側からセルロースファイバーを取り外して確認すると、通気スペーサーの隙間から水が流れ落ちたような痕跡が見つかりました。
さらに、取り外したセルロースファイバーをポリ袋に入れ、日射に約30分当てて確認したところ、ポリ袋の内側に大量の水滴が付着しました。これは、セルロースファイバーが多くの水蒸気を含んでおり、日射で温められたことで内部の水分が蒸発し、袋の内側で冷やされて結露したためです。
このように、いったん建材や断熱材に含まれた水分が、日射や温度上昇によって再び水蒸気として放出される現象は、いわゆる「蒸し返し現象」と呼ばれます。
屋根まわりは日射の影響を受けやすく、温度が上がりやすい場所です。そのため、建物内部や建材に含まれた水蒸気が移動し、屋根付近に集まりやすくなります。
今回の湿気の原因としては、施工時の養生不足により建材が雨水を吸収していた可能性が考えられます。また、室内側の壁や天井に防湿層が設けられていなかったことも、日常生活で発生する水蒸気が壁体内や屋根断熱部分へ入り込みやすくなった要因と考えられます。
通気の入口と出口が不足していたことが結露の原因に
次に、片流れ屋根の水上側と水下側にある小さく張り出した軒天井を外側から解体し、通気の状態を確認しました。
すると、露出した垂木に結露の痕跡が見つかりました。特に結露跡が広がっていたのは、軒裏換気部材が設置されていない部分でした。一方で、軒裏換気部材が設置されている部分では、結露の影響は比較的少ない状態でした。
今回の住宅では、通気スペーサーによって垂木間の通気経路はつくられていました。しかし、通気の入口と出口にあたる軒裏換気部材の設置箇所が、軒天井の一部に限られていました。
通気層は、入口・経路・出口の3つがそろって初めて十分に機能します。
T様邸では、軒裏換気部材が設置されている垂木間だけは空気が流れていましたが、それ以外の垂木間は閉塞した状態になっていました。そのため、閉じ込められた水蒸気が屋根内部に溜まり、結露が発生していたのです。
この結露が軒天井材に影響し、ケイ酸カルシウム板のひび割れや剥落につながったと考えられます。
外張り断熱と通気経路の再構築で修繕
この住宅では、換気部材の有効面積としては一定の基準を満たしていました。しかし、実際には通気経路の一部が閉塞していたため、屋根全体として十分な通気が確保できていませんでした。
屋根断熱の住宅では、このように「計算上は足りているが、実際には空気が流れていない」というケースが見られます。
今回の修繕では、まず外側から屋根ふき材と野地合板を解体し、水蒸気を含んだセルロースファイバーを撤去しました。そのうえで、既存垂木の外側に厚さ100mmのアルミ箔面材付き硬質ウレタンフォームを外張りし、断熱性能を確保しました。
さらに、その上に通気垂木を新設し、水下側から水上側へ空気がスムーズに流れるように通気経路をつくり直しました。軒先から屋根上部まで空気が抜けるようにすることで、通気の入口・経路・出口が連続する構造に改善しました。
この方法は、既存の通気スペーサーを使った仕様よりも施工品質を確保しやすく、すべて外側から施工できるため、住みながら修繕を進められるという利点があります。
けらば側にも換気部材を設けて通気不良を解消
今回の修繕では、けらば側にも軒裏換気部材を設け、通気不良が残らないようにしました。
けらば側から入った空気を縦横に流し、屋根全体で排出できるようにするため、けらば部分の通気垂木には必要な切り欠きを設けました。これにより、特定の垂木間だけでなく、屋根全体に空気が回るようにしています。
また、野地合板の劣化を防ぐため、水蒸気の透湿性能を高めたMDF系の野地板を使用し、新設した通気垂木間にも断熱材を付加しました。
工事中は、再び部材が雨水を吸収しないよう、雨養生も徹底しました。足場を組んで外壁と屋根を養生シートで覆うだけでなく、既存屋根の上に支保工を立て、屋根を二重に養生することで、工事中の雨濡れを防ぎました。
今回の事例では、雨漏りのように見える水跡や軒天井の剥落が、実際には屋根断熱部分の結露と通気不良によって起きていました。屋根断熱では、断熱材の性能だけでなく、防湿層の有無、施工時の雨養生、通気の入口・経路・出口が正しく確保されているかが非常に重要です。
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