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お客様からのご相談
J様より、屋根点検のご依頼をいただきました。
J様のお宅は瓦屋根で、これまで一度も大きなメンテナンスをしたことがないとのことでした。ご近所で瓦屋根が強風によって飛んだことがあり、「我が家の屋根も大丈夫だろうか」と心配になり、今回点検をご依頼くださいました。
近年は、台風だけでなく、突風や豪雨などの自然災害が全国的に目立つようになっています。屋根は普段あまり目にすることがない場所ですが、強風時には建物の中でも大きな負荷を受ける部分です。
J様が特に気にされていたのは、過去に関西を襲った大型台風による屋根材の飛散事故でした。飛ばされた屋根材が人や建物に被害を与える事故は、決して他人事ではありません。J様のご両親も関西にお住まいとのことで、屋根の安全性について強く意識されるようになったそうです。
屋根の飛散事故で怖いのは、自宅の被害だけでは済まないことです。飛散した瓦や屋根材が、通行人、近隣住宅、車などに被害を与える可能性があります。普段は「自宅の屋根が他人を傷つける」と考える方は少ないかもしれませんが、強風時にはそのリスクが現実になります。
そのため、屋根のメンテナンスは雨漏り対策だけでなく、周囲への被害を防ぐためにも重要です。
J様邸では、瓦のずれや浮き、割れ、漆喰の劣化、棟まわりの歪みなどを中心に確認しました。瓦屋根は耐久性の高い屋根材ですが、固定力が弱まっていたり、棟部分が傷んでいたりすると、強風時に瓦が飛散する危険があります。
特に、長年メンテナンスをしていない屋根では、地上から見ただけでは分からない不具合が進んでいることがあります。瓦の一部が浮いている、棟瓦が歪んでいる、漆喰が剥がれているといった症状は、飛散事故や雨漏りの原因になりやすい部分です。
また、屋根材が飛散して他人や他の建物、車などに被害を与えた場合、建物の所有者や占有者に責任が問われる可能性があります。
民法717条では、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり、それによって他人に損害が生じた場合、まず占有者が損害賠償責任を負うとされています。ただし、占有者が損害発生を防ぐために必要な注意をしていた場合は、所有者が責任を負う仕組みです。所有者については、過失の有無にかかわらず責任を負う形になっています。
つまり、戸建て住宅や賃貸アパートで屋根材の飛散による事故が起きた場合、最終的に所有者の責任が問題になる可能性があります。人命に関わる事故になれば取り返しがつかず、賠償額も大きくなるおそれがあります。
もちろん、飛散事故の原因が明らかな施工不良であれば、所有者が施工者の責任を問える場合もあります。過去の最高裁判決でも、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵について、設計者や施工者などに不法行為責任が認められる可能性が示されています。
ただし、実際に施工者の責任を追及するには、施工不良の内容や事故との因果関係を立証する必要があります。屋根材が飛散してしまった後では、釘の本数不足や固定方法の不備などを確認することが難しくなる場合もあります。
また、不法行為に基づく損害賠償請求には期間制限があります。現行民法では、原則として損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消滅するとされています。人の生命・身体の侵害による損害賠償請求については、改正により期間が長く扱われる場合があります。
このように、万が一屋根の飛散事故が起きた場合、法的な責任関係は複雑になります。だからこそ、事故が起きてから対応するのではなく、日頃から屋根の状態を点検し、飛散リスクを減らしておくことが大切です。
今回のJ様のように、雨漏りが起きていなくても「屋根が飛ばないか心配」という理由で点検することは、とても大切な予防策です。
屋根の飛散を防ぐためには、次のような部分を定期的に確認する必要があります。
- 瓦のずれや浮きがないか
- 割れている瓦がないか
- 棟瓦に歪みがないか
- 漆喰が剥がれていないか
- 屋根材の固定力が落ちていないか
- 台風や強風後に異常が出ていないか
瓦屋根は長持ちする屋根材ですが、メンテナンスをしなくても永久に安全というわけではありません。特に築年数が経過した住宅では、屋根材そのものよりも、固定部分や棟まわり、漆喰などが劣化していることがあります。
適切なメンテナンスを行い、飛散事故を防ぐことは、住まいを守るだけでなく、近隣の方や通行人を守ることにもつながります。
屋根は見えにくい場所だからこそ、定期的な点検が重要です。強風や台風の前後、または長年メンテナンスをしていない場合は、早めに屋根の状態を確認しておくことをおすすめします。
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